KTCC NEWS 第13号(2021年1月)
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●日本語スピーチ
~ 成長 ~
各企業にて毎月の定期訪問時に開催している日本語スピーチ。
そう菜加工で実習生を受け入れている大阪府N社では、テーマを本人たちに委ねています。
2018年5月に入国したベトナム出身ソンさんは、実習の中で自分が成長したことをテーマに発表しました。
ベトナムの送り出し機関で半年間日本語を学びましたが、日本人の先生が話す内容を理解できないまま来日したそうです。
実習が始まってからも注意されてばかり。
何を注意されているのかが分からず、ソンさんは会社へ行くことが怖くなってしまいます。
しかしこのままでは何も進まないと、気持ちを新たに勉強に取り組みました。
自身の努力だけでなく、日本人の方が日本語と実習の両方を熱心に教えて下さったことも成長につながったというソンさん。
「会社へ行くことが楽しいと思えるようになった」とはにかむその笑顔は、入国時には見られなかった自信で満ち溢れていました。
日本語に対する不安、実習がうまくいかない葛藤。様々な想いの中で実習生たちは過ごしています。
ソンさんは幸いにも自分自身で乗り越える術を見つけることができましたが、そうでない実習生もいます。
彼らの「ヘルプサイン」を見逃さない努力、加えて、技能実習制度の目的を実現するための熱意が、受け入れ企業や組合には必要だと考えさせられました。
●ちょっといい話
~ 助け合い ~
組合スタッフのタンはD社の実習生から、「ベトナムの被災地へ寄付をしたい」と相談を持ち掛けられました。
2020年10月にベトナム中部地域を襲った記録的な豪雨。その被害は甚大なもので、故郷のために何かできないかと考えた末の相談でした。
タンの母国もベトナム。実習生たちの愛国心につき動かされ、D社に募金活動を許可して頂きました。
最終的には26人の有志と共に、ベトナムの団体を通じて6万6千円を寄付することができました。
大きな金額ではないと思われるかもしれませんが、決して余裕があるとはいえない生活費の中から実習生たちが工面した、いわば「珠玉の」募金と言えます。
現在世界は未曽有の事態に直面しており、多くが他人のことに構う「心の余裕」を持てなくなっています。
そのような中で見せた彼らの行動はまさに、「助け合いの精神」を体現していると思います。
少し暗い世の中に新年の明るさを予感させるエピソードでした。
※募金(送金)の証明と有志の名簿です。
●トラブル事例
~ 共同生活 ~
Y社の定期訪問時、実習生同士の関係がぎくしゃくしているように感じました。
本人たちに聞いたところ、「食事の後すぐに食器を洗わなかった」「テレビをつけっぱなしだった」といった、共同生活でのトラブルが原因でした。
自分たちでルールを作るよう指導し、それらが守られているかを当面は毎回確認することにしました。
実習生の多くは仲間と共同生活をしています。
長い時間を共有しているため、不満の積み重ねが人間関係に溝を作ってしまうこともあります。
解決にはルールだけでなく、思いやりや気遣い、コミュニケーションも必要です。
感情的にならず、相手の気持ちを考えたうえできちんと伝える。原因を作った方は素直に謝る。
日本での3年間が、人との関わりを学ぶ場でもあって欲しいと思います。
●コラム
~ 日本語学習意欲 ~
A社の生活指導員の方より相談がありました。
半年前に帰国した1期生と比べて日本語力が低下しており、入国後約半年の4期生に至っては、わからなくても同じシフトの先輩に頼ればどうにかなると考えているようでした。
1期生には当然のことながら頼れる先輩がいませんでした。
自分たちの日本語力を向上させる以外、日本人と意思疎通をはかる手段がなかったのです。
また、お互いにライバル心に燃え、非常に熱心に学んでいました。
しかし2期生以降は様変わりし、頼れる先輩たちに甘えることで日本語学習の動機が弱まっていったと考えられます。
「意欲を向上させる」というのは簡単なことではありません。
「勉強しなさい」と問題集を渡すだけでは、やる気のない者にとっては豚に真珠、猫に小判です。
また、抽象的で無機質な目標では息切れしてしまいます。
むしろ「●●さんより上手くなりたい」「日本語ボランティアの可愛い先生ともっと話をしたい」「試験に合格して報奨金をもらいたい」といった、具体的な目標なら続けられるかもしれません。
私ども監理団体は定期訪問を通じて企業様、実習生それぞれに接し、会話できる機会があります。
悩める企業様とともに実習生の「やる気スイッチ」を探す、そんなお手伝いができるようにならなければ。
自らを戒めるきっかけとなりました。